一笑美茶樓と臥龍居、Wakiyaグループの調理場のメニューを考案したり、調理人のスケジュールを管理したり、その他、食材の仕入れや仕込み、メディア対応を含めた商談など、仕事はバラエティに富んでいて、かなり幅広いです。
料理人はチームで動くので、一人一人の調子を見極め、いいところを引き出す編成が大切になります。「少し体調が悪そうなので、この人は今日は負担の少ない担当にしよう」とか「今日は大人数の予約が入っているので、こっちに多く配置しよう」など、臨機応変の対応力が求められます。ロボットを操作するのではなく、個性豊かな人間相手なので、やっぱり気を遣いますよね。料理長の指揮で、みんな動くので、決断力も必要です。お客さまにより喜んでいただくために「Aか、Bか」どちらかの道を瞬時に選ばなきゃいけない。「よし、Aだ!」と指示を出しても、やっているうちに「違う。Bだった」ということもあります。その時には、半ば強引に方向転換するだけのリーダーシップも欠かせません。例えば、メニュー一つとっても、「このお客さまには、これだけの品数がいいだろう」と考案したけれど、「いや、1品減らしても、メインをもっと充実させるべきだった」とか、後悔することも山ほどありますよ。でも、失敗を糧にして、次はもっと喜んでいただけるよう、気持ちを切り替えるようにしています。
メニュー考案は楽しい?
楽しいですが、大変です。締め切りに追われる漫画家さんの気持ちがちょっとわかります(笑)お客さまから「今日中に案を出して」と急に依頼されることもあるので。パッと頭に浮かんだアイディアをスマホのメモに残し、帰りの電車など時間のある時にはいつも見て考えています。ランニングが趣味で、休日は1時間半ほど近くの公園を走るのですが、季節の変わり目を感じると「そうだ、今度、あの食材を使ってみようか」などヒントを得ることもあります。
Wakiyaの魅力は?
脇屋社長がメディア関係の仕事を多く受けていて、人脈もとても広いので、レストランでの仕事にとどまらず、例えば取材だったり、イベントだったり、いろいろな経験ができることです。日本人のシェフが本場中国に招かれることはそんなにないと思うのですが、本土だけでなく、香港や台湾などのイベントからも声がかかりました。単にグローバルな視点を持てるだけでなく、やはり、その土地を訪れ、目で見て肌で感じることは、料理人として大きな刺激になります。
また、脇屋社長は和洋中関係なく、あらゆるジャンルの料理人とのつながりも強いので、ここで働いているだけで、知らず知らずの内に引き出しが増えているんですよね。
取材や撮影に立ち会うことも、その時は現場をこなすだけでいっぱいいっぱいだったとしても、後々、必ず役に立ちます。
どんな新人だった?
入社したのが1995年なので、あまりに昔すぎてよく覚えていませんが、とにかく怒られまくっていましたね。一番、怒られていたんじゃないかな? その瞬間は「理不尽だな」「納得できない」と不満もあるのですが、グッと飲み込む。そうすると、3年後、5年後に社長や先輩が言いたかったことが理解できるようになるんです。頭の片隅に残っていたことが、料理のヒントになったり・・。若いときは、目先のことしか考えられないけれど、「そんな短絡的なことではなく、先の先まで見て叱ってくれていたんだな」ということがたくさんありました。思考能力が鍛えられたというか、角度を変えて物事を捉えられるようになったと思います。
世界観がガラリと変わったのは、25歳ぐらいの時。この頃、ガツガツ仕事にのめり込んでいたのを見込まれたのか、社長に「ロサンジェルスのチャリティーイベントに招かれたから、おまえもついて来い」と声をかけてもらったんです。いやぁ、毎日、本当にエキサイティングでした。深夜1時くらいに、「今から20人のお客さんが来るよ」って。中には有名な人もいて、見たことのない料理がいっぱい並んでいて、「なんだ、これ!」ってすごい驚いて。次から次へ、絶え間なくいろんなお客さんが来て、寝る間もないほどずっと料理に向き合って、でも興奮状態にあるから、全然疲れないんです。もちろん、いろいろしでかして、いっぱい叱られましたが、それすら楽しい(笑)「こんなすごい世界があるんだな」って、本当に最高の経験をさせてもらいました。以来、料理に対する姿勢が変わった気がします。
どんな人と一緒に働きたい?
やっぱり「ぜひWakiyaで働きたい!」と言ってくれる人ですね。その熱量が高ければ高いほど、チームに活気を与えてくれると思うので。数ある中国料理店の中で、なぜWakiyaを選んでくれたのか。新しいことに挑戦する人特有のキラキラしたパワーを感じたいですね。
今後の目標は?
和洋中さまざまな料理がある中で、「やっぱり中華だよね!」とお客さまに喜んでいただけるような料理を作っていきたいです。脇屋社長もそうなんですが、日本人のシェフがチャイニーズをやっている良さ、そのレベルの高さを世界に向けて発信したいと思っています。
入社して30年近く経つと、それなりに壁にもぶつかって、くすんでくる部分もあるのですが、入ったばかりの頃の初々しさを忘れずにいたいですね。壁を乗り越えてきたことは間違いなく強みになっているので、初心に立ち返り、「これやりたい」「あれもやってみたい」と考えてきたことにどんどん挑んでいきたいです。